電子マネー

電子マネーは、店舗へのシステム導入コストや決済に関わる手数料の問題があり、いまだすべての店舗で使えるわけではありません。交通系電子マネーの導入には、数百万円の投資が必要になる場合もあります。そういう意味では、小規模決済システムとは、現状では相互補完的な意味合いをもちます。しかし、そこに介在しているのは「技術」の問題にすぎません。店舗における小規模決済の重要度が高まるほど、現在の電子マネーとの間を隔てるものは小さくなっていくでしょう。

デジタルコンテンツ需要の増加は、また別の側面から「電子マネー」の需要増加を生み出しています。2013年頃からコンビニエンスストアの片隅で、クレジットカードに似たサイズのカードが多く売られはじめています。これらはすべて、ゲームや音楽などのデジタルコンテンツを買うためのプリペイドカードです。

デジタルコンテンツを買う場合の決済は通常、ネットだけで完結します。そのため現状では、決済にクレジットカードを用いる前提でサービスが設計されています。欧米でのカ-ド利用率は、全決済の50%を超えるといわれており、もっとも手軽な決済手段のひとつとなっています。しかし日本の場合、カード決済の利用率は十数%しかなく、ネット経由で使用することへの心理的な抵抗感も小さなものではありません。またそもそも、クレジットカードをもてない年層にも、デジタルコンテンツに対する需要は存在します。

そうした需要に対応するには、まず現金で支払っておき、その中からコンテンツ利用料に充当する、プリベイドカードがもっとも適しています。プリペイドカードは身近な場所で購入できないと顧客を逃がすことになりますから、日本中どこにでもあるコンビニエンスストアとの連携が重要になってきます。じつは、この流れは日本だけのものではありませんし、デジタルコンテンツに限った話でもなくなりつつあります。

アメリカのコンビニや量販庖には、日本以上にプリベイドカードがあふれでいます。その中には、家電量販庖やフアストフードの支払に使えるものもふくまれます。それどころか、「クレジットカードの代わりになるプリベイドカード」も登場しています。こうしたプリベイドカードは、クレジットカード大手のVISAなどが発行しており、通称「バニラカード」などと呼ばれています。バニラカードには、クレジットカードと同様にカード番号と有効期限などが書かれており、決済時にはクレジットカードと同じように扱われます。一部の例外を除き、どんな支払にも使えますが、本質はあくまでプリペイドカードですから、チャージした金額分しか使えません。

バニラカードやプリペイドカードが増えている背景には、クレジットカード大国であるアメリカですら、若年層と低所得層を中心に、クレジットカードを避ける人々が増えている、という現実があります。クレジットカードは本質的に「借金を促進する」システムであり、特に2008年のリーマンショック以降、そうした負担を避ける傾向が強まっています。またそもそも、与信の可否に対する評価が厳しくなり、若年層・低所得層にとって逆風が吹いています。日本はクレジットカード利用量の少ない国ですが、クレジットカードを好まない層がいる、という点では、アメリカもまた共通した問題を抱えています。しかし、クレジットカードによる決済が便利であるという事実はゆらぎません。そこで、決済のしくみは変えず、利用者のプリペイドカードに対するニーズを満たそうという観点から生まれたのが、バニラカードなのです。ビジネスの多様化により、決済手段のあり方も変貌をとげつつあります。クレジットカードですらニーズを満たせていない現実があるのです。ここに、ビットコインのような「暗号通貨」が登場する下地が存在します。